歯医者さんの月間専門雑誌「DENTAL DIAMOND」2019年12月号に寄稿しました

歯が語る“古代の物語” 

 

2012年の秋、群馬県渋川市金井裏地区の遺跡から発見された1500年前(古墳時代後期)の榛名山噴火の火砕流に巻き込まれて犠牲になった一家4人の家族。遺されたその中の夫婦の骨の特徴から、父は弥生系で母は縄文系の特徴が見られた(濃尾平野系と諏訪地方系?)。

 

また歯の中に微量に含まれるストロンチウムの分析から、彼らが幼少期に育った場所は天竜川流域の伊那谷地方で、花崗岩質の成分が濃い水を飲んで育った可能性があることだった。

 

その他の様々なデータから見えて来たストーリーは、彼らは子供時代に南信州の伊那谷で馬牧を管理しながら暮らしていたが、現在の群馬県の榛名山麓に移住し、小さな国(クニ)の様な集団の若きリーダー(王か)になっていった。しかし日に日に噴火が始まり、遂に周りの者がみな避難した後に甲冑を身に付けて最後までムラに居残り、怒る山の神に祈り続けた。そして火砕流に巻き込まれた――というドラマも見えてきたのだった。

 

――NHK番組でも取りあげられた古墳時代人のストーリーと、「歯」の分析からさらに広がっていくロマンストーリーを、歯医者さんに向けて紹介しました。